ご挨拶
この度、タラ劇場でアイヌ旺征露プロジェクトを皆様に御覧いただく機会をいただき、たいへん光栄です。
シェイクスピア・カンパニーは日本の東北にある仙台市を拠点に活動しています。私は1992年にこの劇団を旗揚げし、以来地元の人々が身近に楽しめるシェイクスピアの翻案劇を発表してきました。タラ劇場の芸術監督ジャティンダ・ヴァ―マ氏は劇団開設当時からの朋友でありました。
「オセロ」は私には特に思い入れのある作品ですが、その軸となる人種問題は日本では置き換えの難しいテーマでした。取材エリアを広げて検討するうち、北海道の先住アイヌ民族の存在に行き当たり、150 年前に日本人女性と結婚したアイヌ男性の悲劇として描きました。しかし初演した2010年当時、先住民問題への取り組みが世界に比べて遅い日本では様々な批判も浴び、慎重な上演活動にせざるを得ませんでした。
その後しばらくの時間をおいて、再び悲劇「オセロ」に取り組もうと調査を再開した2017年、不思議な縁で北海道の阿寒湖というアイヌの村で演劇や舞踊の演出をしている秋辺デボ氏と巡り合いました。彼は、日本人の劇団員だけでは表現し得なかった人種間の差別や嫉妬に関わる生々しい感情を作品から掘り起こしてくれたのです。また、イヤーゴを日本人とアイヌの混血にするというアイデアをサポートしてくれたのは、他ならぬジャティンダ・ヴァ―マでした。彼は昨年「アイヌ旺征露」公演をはるばる日本まで見に来て、私たちにロンドン公演のチャンスを提供してくれました。
今回の公演は、私の率いるシェイクスピア・カンパニーとデボの率いる舞踊集団ピリカップのコラボレーション作品です。皆さんの国で生まれた名作が、地球の裏側の小さな島でどんなふうに生まれ変わったのか、どうぞお楽しみください。
シェイクスピア・カンパニー主宰
下館和巳
キャスト
役名(ふりがな) ※役柄 | 原作名 | 役者名 |
旺征露(おせろ) ※仙台藩エトロフ脇陣屋筆頭御備頭・アイヌ |
オセロ |
水戸貴文 |
貞珠真(でずま) ※草刈番匠の娘 |
デズデモーナ | 石田愛 |
井射矢吾(いいやご) ※仙台藩エトロフ脇陣屋付旗持 |
イアゴー | 犾守勇 |
驢駄狸吾(ろだりご) ※クシロの網元の子息 |
ローダリーゴ |
加藤捺紀 |
白河華士郎(しらかわかしろう) ※仙台藩エトロフ脇陣屋付奉行 |
キャシオ |
渡邉欣嗣 |
氏家英之進(うじいえひでのしん) ※仙台藩ネモロ脇陣屋筆頭御備頭 媚杏香(びあんか) ※白河華士郎の情婦・アイヌ |
ヴェニス公国大公 |
香田志麻 |
草刈番匠(くさかりばんしょう) ※仙台藩ネモロ脇陣屋御備頭 栗村尾江(くりむらびこう) ※仙台藩ネモロ脇陣屋付奉行 |
ブラバンショー ロドヴィーコ |
藤野正義 |
恵美利亜(えみりあ)
※井射矢吾の妻 明宣次郎(めいせんじろう) ※ネモロ脇陣屋三番隊目付 |
エミリア 伝令 |
山路けいと |
アイヌの女性たち |
―――― |
早坂ユカ、早坂由似、藤岡千代美、上野亜由美 (舞踏集団ピリカプ) |
スタッフ
翻案・演出 | 下館和巳 |
共同演出 | 秋辺デボ |
監修 | 榎森進(アイヌ民族史研究科) |
音楽 | 橋元成朋 |
照明 | タラ劇場 |
舞台監督 | 廣瀬純 |
テクニカルマネージャー | 加藤捺紀 |
アイヌ語翻訳 | 大野徹人 |
脚本英訳 | 今野史昭 本山哲人 |
制作マネージャー | 菅ノ又達 |
制作アシスタント | 下館宇未 川田哲也 増田寛子 及川寛江 |
演出補佐 | 両國浩一 岩住浩一 |
プロジェクトスタッフ
タラ劇場プロデューサー | ジャテインダ・ヴァーマ |
プロデューサー | 阿部路子 |
ファンナンスマネージャー | ササキけんじ |
マーケティングマネージャー | 浅見典彦 川田和歌子 |
パンフレットデザイン | 庄子陽 |
パンフレット木版画製作 | 早坂賀道 |
パンフレット翻訳 | アリソン・ワッツ |
企画展アドバイザー | 西野昭平 |