下館和巳が『ハムレット』の舞台として江戸末期を選んだことは、一見かけ離れているようだが、実はそうでもない。 原作『ハムレット』の舞台は、市民の不安や国の諜報活動があった時代のデンマークであり、日本の将軍が南/北/外国の衝突に直面し、それが東北地方に影響していた1868年状況と似ているところがある。『ハムレット』も『破無礼』も、史実をもとにしてフィクションを創り出している。
非常にユニークで魅力的な破無礼は歴史に対する敬意と深い知識があり、人物名や場所が変わっていても、真正シェイクスピア作品の質を確実に保っている。これは驚くべき成果だ。原作を細部なまで知り尽くた演出家と、観客を飽きさせない才能豊かな役者たちが綿密に調和しながら、この劇団は有名な物語を東北に持ち込み、日本の歴史の心を現代の観客や社会に提示している。
物語そのものや、軍人、息子、恋人、友人の立場でハムレットが葛藤しながら死や復讐に向かう点は普遍的であり、時代を超えるテーマはこの作品でも原作に忠実で強い求心力を持っている。東北の方言は、時にわかりにくいことはあっても、全編を通じて言語に魅力と音楽性を与えており、これはシェイクスピア時代の古典的英語の魅力に近いものがある。一旦東北弁の登場人物名と、名字が先にくる習慣(例えば、ハムレットは天馬破無礼/テンマ ハムレ、オフィーリアは真田依 璃亜/サナダ エリア、など)に慣れてしまえば、物語はぐっとわかりやすくなる。
文化の交わりは衣装(王族には羽織袴や着物)から象徴的なもの(地方ごとの特徴に注目)に至るまできちんと表現されている。体の動きは、日本の上流階級の厳格な流儀やヒエラルキーに基づき、全体を通じて抑制されている。また、ハムレットの母の上品なもみ手はその悲しみを適切に表現しているし、道化的な笑いは、より猥雑になっている。
原作のテーマとストーリー展開に忠実でありながら、印象深いオリジナルシーンも多い。舞台全体を喜びと笑いで満たす素晴らしい歌やダンスのシーンがあり、ダンスは後のフィナーレにつながっている。あの世にいる魅惑的な亡父の存在は、 舞台真ん中後方に上から照らし出される形で魔法のように何度も現れる。舞台装置は全体的にとてもシンプルだが、その代わり、役者の動きと言葉が雰囲気を作っている。小道具もほとんどないが(花、頭蓋骨など少しだけ)、実際その必要性をあまり感じさせない。にんまりさせたり大笑いさせたりするユーモアにも溢れている。 そしてラストシーンはなぜか、この恐ろしい悲劇のただ中で、我々に希望のイメージを残してくれる。
これは記憶に残る『ハムレット』解釈である。シェイクスピアの芝居の中で最も長く、そしておそらく最も有名な『ハムレット』は、いつも観客に多くの課題を残してきた。しかしこの劇団はその課題に向き合って、シェイクスピアの物語そのものに挑戦している。 背景と登場人物を東北に移したことで、下館とその劇団は一瞬にしてハムレットを日本の観客にとってよりわかりやすいものにすると同時に、シェイクスピアの全く新しいビジョンを打ち出した。丁寧に綴られた魅力的な脚本もさることながら、この芝居の強さと魔力は、最高にエネルギッシュでかつ完全に自然体な役者たちと、それを導いた演出家・制作チームによるものである。
Anna Marrie (アナ・マリー)
日本語訳 山路けいと
PREVIEW ★ by Annnamaree Northridge/Sugai.MA.
Northridge氏はイギリス出身、演劇の名門であるブリスト
ル大学、ロンドンのドラマスクールを経てBBC(英国放送)
の脚本制作、出版物や記事の執筆で多数の実績があり
ます。
役名 (ふりがな) |
原作名 | 役者名 |
天馬破無礼 (てんまはむれ) |
ハムレット |
岩住浩一 |
天馬鞍有土 (てんまくらうど) |
クローディアス | 犾守勇 |
天馬雅藤(雅春院) (てんまがとう) |
ガートルード | 長保めいみ |
先代天馬藩主の霊 |
ハムレットの父の亡霊 | 両国浩一 |
真田蓬呂 (さなだほうろ) |
ポローニアス | 川村淳 |
真田礼亜 (さなだれいあ) |
レイアーティーズ | 松川雅俊 |
真田依璃亜(依璃亜姫) (さなだえりあ) |
オフィーリア | 星奈美 |
真田蓬呂の奥方の幻 |
―――― | 村田たいこ |
細谷帆礼 (ほそやほれい) |
ホレイショー | 関亮太 |
乾抱天 (いぬいほうてん) |
フォーティンブラス ノルウェイの士官 | 神蔵康紀 |
玉虫左太夫 (たまむしさだゆう) |
ヴォルティモンド | ササキけんじ |
漏電 (ろうでん) |
ローゼンクランツ | 武市奈緒子 |
停電 (ていでん) |
ギルデンスターン | 伊藤真理子(141仙台公演) |
丸瀬 (まるせ) |
マーセラス |
菅原岳(141仙台公演) 塩谷 豪 |
成土 (なるど) |
バーナード | 松川雅俊 |
麩羅 (ふら) |
フランシスコー | 川村淳 |
神谷草人 (かみやそうじん) |
俳優1 | 塩谷豪 |
役者たち |
役者たち |
石田愛 ササキけんじ 菅原 岳(141仙台公演) 松川雅俊 村田たいこ 李暁冬(141仙台公演) なばためまさこ(大崎市公演・イズミティ21公演) 両国浩一(大崎市公演・イズミティ21公演) 山路けいと(大崎市公演) |
鈴那 (れいな) |
レイナルド |
石田愛(141仙台公演、イズミティ21公演) 長保めいみ(大崎市公演) |
世良重蔵 (せらじゅうぞう) |
―――― | 塩谷豪(141仙台公演、大崎市公演) |
大山岳之助 (おおやまがくのすけ) |
―――― |
菅原岳(141仙台公演) 両国浩一(大崎市公演) |
鴉組 (からすぐみ) |
―――― |
関亮太(141仙台公演、大崎市公演) 松川雅俊(141仙台公演、大崎市公演) 李暁冬(141仙台公演) |
土方歳三 (ひじかたとしぞう) |
―――― | 村田たいこ |
島田魁 (しまだかい) |
―――― |
菅原岳(141仙台公演) 松川雅俊(大崎市公演、イズミティ21公演) |
新撰組 (しんせんぐみ) |
―――― |
松川雅俊(141仙台公演) 李暁冬(141仙台公演) 関亮太(大崎市公演) 武市奈緒子(大崎市公演) |
但木土佐 (ただきとさ) |
コーニーリアス | ササキけんじ |
なぎなた隊 |
―――― |
長保めいみ(大崎市公演) 山路けいと(大崎市公演) 星奈美(大崎市公演) なばためまさこ(大崎市公演) |
僧侶 (そうりょ) |
―――― |
菅原岳(141仙台公演) なばためまさこ(大崎市公演) |
鶴助 (つるすけ) |
墓堀1 | 塩谷豪 |
亀助 (かめすけ) |
墓堀2 |
李暁冬(141仙台公演) 川村淳(大崎市公演、イズミティ21公演) |
従者 |
石田愛(141仙台公演) 村田たいこ(大崎市公演) 山路けいと(大崎市公演) |
|
小津陸 (おづりく) |
オズリック | 武市奈緒子(141仙台公演、大崎市公演) |
町人たち |
関亮太(141仙台公演、大崎市公演) 松川雅俊(141仙台公演、大崎市公演) 村田たいこ(141仙台公演、大崎市公演) 李暁冬(141仙台公演) 両国浩一(141仙台公演) 長保めいみ(大崎市公演) |
翻訳・脚本・演出 | 下館和巳 |
演出 |
下館和巳 山路けいと |
脚本構想 |
下館和巳 丸山修身 菅原博英 鹿又正義 |
制作 |
阿部典子 なばためまさこ 要トマト 長保めいみ |
エディター | 鹿又正義 |
音楽/音響 |
橋元成朋 藤本興 |
照明 | 松崎太郎 |
舞台美術 | 庄子陽 |
ポスターデザイン |
佐藤正幸 芝原淳一 庄子陽 |
フォトグラフ | 斉藤秀一 |
映像編集 | 吉野浩 |
舞台装置 |
梶原茂弘 千葉安男 菅ノ又達 戸田俊也 関亮太 |
小道具 |
松川雅俊 ササキけんじ 川村淳 長保めいみ |
衣装 |
鹿戸千恵 菅原裕子 川股弘子 菅原小夜子 山路けいと 星奈美 石田愛 岩住浩一 塩谷豪 |
衣装協力 | クラフトサロン紀美 |
メイク |
武市奈緒子 菅原岳 村田たいこ 高橋文 両国浩一 |
プログラム編集 |
鹿又正義 犾守勇 武市奈緒子 千坂知晃 須藤礼子 |
記録 | 須藤礼子 |
広報 |
佐藤真輝子 磯干健 西間木恵 皆川洋一 岸典之 伊藤真理子 長保めいみ 八重樫まち |
会場 |
千葉妙子 梶原祥子 浅利由美子 国井大輔 相澤まち |
鹿児島弁指導 | 常原一巳 |
ドイツ語指導 | 畠山真知子 |
振付け | HIROMI |
スペシャルサンクス |
高橋文 さるパパ&ママ |
殺陣 | 神蔵康紀 |
アドバイザー |
藤原陽子 松田公江 |
スーパーバイザー | 大平常元 |
制作 | シェイクスピア・カンパニー |