ふるさとで
更新日:2013.3.17
主宰 下館和巳
私は塩釜で生まれて、育った。高校三年まで、そこにべったりと暮らしていた。だから、塩釜を思って目をつぶると、いろいろな光景が見える、いろいろな匂いがする、いろいろな声が聞こえる。
塩釜第二小学校のポプラの木のそばから見える千賀ノ浦、東北電力の三本煙突、曳航を残して松島に向かう観光汽船、塩釜神社のハトの群れ、宮司さんや巫女さんたちの姿。昔の本塩釜駅のプラットホームから見える駅前のにぎわい、観光汽船に乗り降りするたくさんの観光客、塩釜港に水揚げされたマグロの行列、折り鶴のような東北ドックのクレーン。加工場の臭いけれども住む人たちには臭くない匂い、来来軒のラーメンのスープの匂い、修理中の漁船の油の匂い、海からの風の匂い、材木屋から聞こえるビーンという木を切る機械の音、東北ドックのサイレン、観光汽船の拡声器から聞こえるエンヤードット、紙芝居屋の太鼓の音、豆腐屋のラッパの音、ホヤ売りの声・・・。
でも私が18歳で塩釜を離れて、東京で暮らしイギリスに旅だって塩釜を思った時になによりも恋しかったのは、塩釜の言葉だった。国際電話の向こうから聞こえる母の声、祖母の声が心にしみた、涙がでるほどいとおしいと思った。
2月24日塩釜の街で初めて公演をした。自分の言葉を話してわかるお客さんの前でお芝居を見てもらう聞いてもらう悦びは格別だった。やっぱり、ふるさとはいいな~。うれしいな~。