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いい塩梅の舞台

更新日:2013.3.17

主宰 下館和巳

 

 お客さんと役者が一つになれる空間をつくりたいと、ずっと思ってきた。

 どんな空間かといえば、手を伸ばせば届く距離で台詞が言えるようなところだ。それは、喜劇でそれも時代物ではなくて、現代に近くて、方言だからやれるんじゃないかなという気がする。悲劇には、現実とかけ離れたところで起きている虚構の世界の色合いが濃いけれども、喜劇は日常から生まれているから観客と役者の近さは塩梅がいい。それに、方言を遠くで喋ると滑舌によっては、さっぱりわからないけれど、目の前で方言がこぼれてくると、ほんとにリアルだ。

 山元町では、りんごラジオさんのバックアップで、好きなよ~に舞台を創らせていただいた。好きなよ~にとはどんな感じか?いわゆる、額縁舞台というのではなくて、馬蹄形にせり出した舞台で、その舞台を観客が取り囲む感じだ。もちろん、役者にとっては大変だ。なにせ、ある方向のお客さんには尻を向けてしまうし、声を届かせられないからだ。観客席によっては不公平感がある。でも役者には、そのことを充分に意識してもらって、さながら人間廻転舞台のごとく、喋りながらゆっくりまわってもらった。

 観客席から役者が登場し、観客席に役者が退場し・・・。山元町の舞台は、いたるところで笑いに包まれた。時間は20分も延びた。まるで温泉の湯船でお芝居をやっているようだった。あれは、まったく役者冥利に尽きる舞台だったんじゃないだろうか、と思う。