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スピリット・オヴ・プレイス 

更新日:2012.12.9

主宰 下館和巳

 

 要するに「場の魂」。東北に劇場を建てたいと思い始めていた頃、私の三人の娘の母に会った頃、スーパーヴァイザーの大平常元先生や広瀬純ちゃんに会った頃、仙台で「スピリット・オヴ・プレイス」という革命的で創造的な国際大会が開かれていた。なんとステキな名前だろう!と今さらながら思う。

 私たちの『新・ロミオとジュリエット』は、これまでにないほどたくさんの場所を訪れる。そして、この一ヶ月の間に松山町の酒ミュージアム、石巻のみなと荘、仙台卸町の能BOXで公演をした。いろんな形、いろんな大きさ、いろんな匂い・・・。みんなそれぞれ違う。上手下手の入場退場は言うまでもなく、演出そのものも、その場によって変わっていく。ずぶの素人と新人と若干の経験者からなるニュー・カンパニーは、だからますます大変である。

 「郷にいれば郷に従え」という言葉があるが、私もまったくその通りだと思う。自分たちはこういうお芝居をつくりたいーそれを実現するために、どんな空間も自分たち流の空間に変えてしまうーのではなくて、自分たちの思いと自分たちが演ずる場所が話し合って、自分たちの思いはこの場所ならではの形や雰囲気に溶け込んでいく、余計なこと言わないで思い切りその場に身を任せてみる、と思いがけないなにかが立ち現われてくる。その場その場にしかない何かかけがえのないものが姿を現す。

 人も場も同じだと思う。その人をよく知ってその人のことが好きになるとその人はなにに対しても惜しみなくなる。私たちもだから惜しみなくなる。お互いに惜しみなくなって、どんどん深くなっていく、どんどんおいしくなっていく。「やりにくいな~」と一瞬思うこともあるが、私たちのお芝居にとって理想的な舞台なぞというものはなくて、めぐりあったこの場こそが最も理想的な場なんだと思うと、途端にその場しかくれない、唯一無二のユニークなアイディアが、ぽッとなつかしい友だちのように現れて、新しいワクワクする舞台を生み出してくれる。

 次は、どんな場にどんな人に、会えるんだろう?