好きなようにやってみました (No.25 Autumn 2001)
  
主宰 下館和巳

 『ロミオとジュリエット』で劇団の旗揚げをしてから七年、私たちは原作のせりふと構造を守って『マクベス』まで五作上演してきたが、今度は初めて原作から雰囲気と登場人物の匂いだけをいただいて、昭和三十年代の東北の温泉場に泳がせてみた。これは、いつかやってみたかった方法で、そのわがままが許される数少ないシェイクスピアの喜劇が、この『お気に召すまま』だと、私は思った。
 歴史劇的、喜劇的、悲劇的百花繚乱の『ハムレット』という作品に挑む前に、ほんわかと楽しんでみたいという私たちの思いが、『温泉旅館のお気に召すまま』にあったが、観客反応は「本当によく笑った」「まるで温泉に入っているみたいだった」という肯定派と「笑ったけれどこれでいいの?」「…」の真っ二つに分かれた。笑いにはセンスがある。自分と違うと思われれば舞台との間に距離が生まれる。喜劇は難しい…が、やってみなければわからない。でも、日本語も東北弁も知らないドイツ人の「意味はさっぱりわからなかったけれども、原作と同じ匂いを感じた」というコメントは嬉しかった。
 この脚本はオリジナルといってよいと思うが、あの『お気に召すまま』がなければっできなかったことも確かである。最後にもう一つ、観客と劇団の関係は、まるで男と女の恋愛関係のように新鮮であり続けることが、至難であることを味わい知った。私たちはこれから三年間で新しく生まれ変わらなければならない!