London Diary
Vol. 4
23 October 2023
Umi Shimodate
『遠回り』
少し遠回りだけれど、今日はバスに乗って家に帰ることにした。
夕方の18時頃は仕事を終えた人たちで溢れているが、運良く私は席につくことができた。そのあとすぐ、私の隣におばあちゃんが座ってきた。私が奥につめるとにこっと微笑んできて、とてもかわいらしい方。
私が窓際に座っていたからなのか、そのおばあちゃんはちょこちょこと私を気にかけてくれているのがわかる。「この子、いつ降りるのかしら。」と言う感じで。
きっとすごく優しい人なのだろうな。
私の家に着く3個前のバス停前あたりに差し掛かる時、おばあちゃんは私に「あなたはどこからきたの?」と尋ねてきた。「日本です」と答えると、「私一つだけ知ってる言葉があるのよ」と。
おあばちゃんは会釈をしながら「わかりました」と一言。
日本人が話すような「わかりました」の綺麗な発音だった。ほとんどの人が「ありがとう」や「こんにちは」のなかどうしてその言葉のチョイスなのだろうとは思ったけれど。
なぜだろう、自分とは違う言語を話す人が我々の国の言語を頑張って話そうとしてくれる姿はとても愛おしい。
私は旅行に行く際はその国の挨拶やフレーズを必ず覚えてからいくようにしている。その国の人たちの心に近づくには、その国の人たちの言語を話すことがいちばんの近道なのではないかと思う。うまくなくたっていい。その言葉を話そうとしている姿勢だけで十分、相手に気持ちは伝わっている。
そのおばあちゃんは「日本語ってとても可愛らしい言葉だと思うの、音が特にね」「Prettyね」といってた。
人と話すのが好きみたいだった。
私と同じくらいの時に南アフリカからやってきたらしい。
「イギリスのことは好きですか?」と聞くと昔話をはじめるかのように「そうね、イギリスは全てを私にくれたのよ」と。その声には一瞬、力がこもっていた。なんとなくその言葉とおばあちゃんの表情から南アフリカにいた時代は大変だったのかもしれないなと感じた。
あなたの英語はとてもいいわと言ってくれたが、私は未だに英語を話すことに自信がないと恐縮していると「そんなふうに思わなくていいのよ」と言ってくれた。
もう少し話していたかったのにバス停の前に着いてしまった。
最後に、会えて嬉しかったですと伝え握手をしてバスを降りた。
思わぬ出会いが日々を彩るのだと、こういう時に感じる。