2018年7月14日、シェイクスピア・カンパニー『アイヌ オセロ』札幌公演。
北海道と言えど、快晴の日差しは強く、夏を感じる気候であった。
『アイヌ オセロ』には前身がある。
『アトゥイ オセロ』、2010年度のことである。
『アトゥイ オセロ』もアイヌを題材にした『オセロ』であったので、北海道での公演を考えていた。
時期は2011年3月中旬。
その公演は劇団内の事情で札幌では公演されず、東日本大震災もありシェイクスピア・カンパニーの『オセロ』からは自然と距離が置かれた。
それが7年の歳月を経て札幌で上演されたことは、感慨深いものがある。
2011年の『アトゥイ オセロ』では役者であった私も2018年の『アイヌ オセロ』では制作側となっていた。
実際のアイヌ民族に関わってもらいながら慎重に丁寧につくられた『オセロ』が、札幌の地に降り立つのに関われたのは、何かの縁だろうかと思う。
7年は短くなく、当時学生であった私もとっくに卒業し東北から離れて暮らしている中での公演だった。
シェイクスピア・カンパニーにとって初の北海道公演ということもあり、不安だらけの公演だった。
観客は喜んでくれるのだろうか、そもそも観客は集まってくれるのだろうか。
会場はかでる2・7。
公演前日に札幌入りした劇団員も、それぞれの興奮の背後に不安を抱えていた。
当日は快晴、会場にはぞくぞくと観客が集まった。
今作では6名のアイヌが関わってくれているが、彼らの集客努力もあってアイヌ民族も100名近く来場してくれた。
全体ではおよそ360名程度の観客が集まり、役者も初めての札幌公演で勢いよく芝居をした。
公演後にはこの公演のために来場した、ロンドンで活躍するインド人の演出家ジャティンダ・ヴァーマとアイヌの秋辺デボ、シェイクスピア・カンパニー主宰下館による鼎談も行われ、『アイヌ オセロ』の国際的な可能性が示唆された。
会場を後にする観客たちの表情と会話から、この公演の成功を察するのは容易かった。
観客は嘘をつかない。
東北に木造建築の劇場建設というシェイクスピア・カンパニーの目標にも多くの関心が寄せられた。
今回のプロダクションは札幌公演が終着だが、7年の時間を経て新たな物語が始まった感覚を持っているのは私だけでないと信じたい。
札幌公演担当
渡邉欣嗣