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花咲く娘たち

更新日:2014.1.16

主宰 下館和巳

 

 新年早々体調を崩した。急性大腸炎。よほど疲れが溜まっていたにちがいない。劇団も大学も休んで床に伏した。去年、我が家は八年ぶりに大模様替えをして、私の部屋を長女の宇未に譲り、四人の寝室を次女と三女ふたりの部屋にして、寝室は分散。結局、私はひとりリビングのソファーベッドに眠ることになったから、およそ五日間朝から晩まで、家のみんなが集まるところ私が寝ているという構図になった。

 でも、娘たちはなんだかうれしそうだった。学校から一番早く帰る羽永は、誰もいない家でいつもさみしい思いをしているせいか、ランドセルをおろすかおろさないうちに、私の布団の中にもぐりこんできて、ほんとに思い切り私を抱きしめるとクンクン子犬のように匂いを嗅いで「あ~パパいい匂い!」と言ってほんとうに幸せそうな丸い顔を見せる。そして「パパ、いつまで病気?」って、まるでいつまでもこうしていてほしいように聞くのだ。そのうちに、創楽が福祉のヘルパーさんと一緒に戻ってくる。玄関の扉が開く。「パパいる~?」と大きな声が聞こえて、気がつけば太陽の笑顔がベッドのそばに立っている。私が「おかえり、創楽!」というと、妹の羽永が私にくっついているので、遠慮がちに「はい」と答えて、差し出した私の手を握る。冷たい。創楽の手はいつも冷たいのだけれど、今年の冬は格別の寒さで、創楽の手を氷のようにした。でも、手が大きくなった。女の子らしくやわらかいが骨格が太くなった。手の握り方に表情があって、やさしい。「今日も遅いよ。きっと8時過ぎ」とぶっきらぼうに言って出かけた宇未が、6時過ぎには照れたような笑顔で帰宅。「どう?」と私の調子を聞くと、またたく間に、数日前に指南したお粥を作ってくれた。妹たちも「お粥がいい!」と言い出して、夕食はみんなでお粥になった。「うまいな~」と私がしみじみ言うと、三人娘が笑った。うれしそうだった。

雪の草原に花が三本咲いているようだった。