ことばとのめぐりあい
更新日:2012.7.10
主宰 下館和巳
命の道を歩いていて、つまずいたり、ころんだり、立ち止まったり、うずくまったりする。気がつけばいつの間にかまた歩きだしているのは、誰かに何かに勇気づけられたからだ。 いつどこでだったかは忘れてしまっている。でも、自分に会いたい会いたい、と思っている時があって、私にとってはそれが18歳の、ちょうど大学に入学して東京でひとり暮らしを始めた頃だったような気がする。ぽつんと自分に向き合っているさびしい時間が増えたからかもしれない。
本をにわかにたくさん読むようになった。神田や早稲田や高円寺の古本屋で本を買って本棚に並べてみる。それだけで大学生になったようでうれしかった。備忘録への心に響く言葉の書き込みが濃くなった。久しぶりに37年前の始めたばかりのものを開いて見ると、アリストテレスの『ニコマコス倫理学』の一節が目にとまった。
「生きるとは活動であり、各人はその最も好む事柄に対して最も好む能力を働かせて活動する。これらの行動の愉しみが活動を完成させ、各人の追求する生を完成させるのである」 これを書き記した時、私がどれほど真意がわかっていたかは疑問である。ただ、なんとなくいいな、と思ったのだろう。そう言えば、この言葉を自分の言葉に置換えたことがあることを思いだして、暇にまかせて37年分を振りかえる。あった。1991年12月。シェイクスピア・カンパニー誕生前年のクリスマス。
「人生は活動だ。人は大好きなことに向かって活動する。そしてその時最も才能を発揮する。よろこんで活動している。その時に、活動は完成し、人生もそれによって完成する」 そして、ちょうどその隣に「人生の精髄は好きなものに込められている」(ゴーゴリ-)とあった。