再びシェイクスピアの国で
~ 総本山へ乗り込む ~
(7) 2003年 5月30日掲載
男4人で日本と英国比較
看板はパブの顔。パブは町の顔 撮影 中村ハルコ
似合うぬるいビール
女性ばかりの集いをヘン(雌鶏)パーティーと言い、男のパーティーをスタッグ
(牡鹿)と呼ぶ。先日男4人パブで飲ん だ。おつまみはポテトチップスだけで、
後はエールというぬるいビールだ。ラガー(いわゆる日本のビール)のよう喉越
し すっきりという風ではないが、イギリスの穏やな風土にはこれが案外よく似合
う。
男の一人はイギリス人のデイヴ(D)で、コンピューターソフトを創っている48歳。
もう一人もイギリス人で経済アナ リストのティム(T)37歳。三人目はスリランカ人 の脳外科医シダルトン(S)36歳。そして私カズミ(K)。3 人とも日本通で、4人の 共通点は一つ。子供同士が小学校の同級生である。
それぞれの分野の話が終わって、ほろ酔い加減(イギリス人はなかなか酔わない)になっ てきたころにいつの間にか話題 がイギリス人と日本人になった。
ユーモアで包む悪口
K 「イギリス人って人のことをあまり悪く言わないね」
D 「思っていても言わないね。紳士的じゃないと思ってる」
S 「喉まで出かかってても言わない」
D 「だから、表現がまどろっこしくなって時々わけがわからない」(笑)
S 「でも思ったことを言わないわけじゃなくて」
K 「ユーモアとかアイロニーに変わる」
T 「日本人は自分の感じたこととか、考えたことをあまり言ってくれないよね」
K 「おくゆかしいとも言えるけどね。日本の教育は、自力でものを考えること
に重点を置いてないきらいがあるから」
D 「自分で考えさせる教育は非常識なことや間違ったことを言ってしまっても、
許容するということかもね。
オリジナルな発想を生みやすくはしてる」
T 「日本人は、政治や経済の話題でも、皆新聞の切抜きのようなことしか言わ
ないような気がするね」
D 「それは手厳しいね。イギリス風じゃない」(笑)
K 「日本人は、皆と同じが好きだから」
TDS 「そこが違うんだ」
S 「イギリスには、根底に人間はそれぞれユニークだ、違うっていう考えがあ
るもの」
世界の深窓の令嬢?
D 「僕は、日本の文化ってすごいと思ってるけど、外からはモノばかり見えて
ヒトが見えてこない」
S 「外と交わって変わっていくことに積極的じゃないという気もするんだけど」
T 「日本は混じりっけのない純粋なものを保ちやすい環境にはあった」
K 「自分たちが思うほど純粋じゃない。
でも、<見事に不純な>(これシェイクスピアへの賛辞だけど)イギリスと
比較すればね」
T 「その言葉気に入った」
D 「すると、日本はさしずめ世界の深窓の令嬢ってとこかな?」
K 「それ、アイロニー?」(笑)
ちなみにこの会は夜の7時30分に始まって、解散したのは11時30分なのに、払ったお金は一人2千円ぽっきりで、物価の高いイギリスもパブだけは安くて、嬉しいものである。